雨の日のオルゴール

古びたオルゴールの箱をあけてみた
噴き出すように音が飛び
あふれるように音は流れてつながった

天使の羽が雨に弱いなんて
聞いたことはないけれど
こうして冷たくふる雨を見つめていると
ふと想う
そらのほうを見あげると
つたって落ちる涙まで
泥のしずくのようだから
白い衣が汚れてしまわないかと
気にかかる
わたしの愛したひとたちは
お祖父ちゃんも お祖母ちゃんも
おばさんも
いつもわたしの傍にいて
囲んで守ってくれているのに
こんなにそらがよどんでいてはと
つらくなる
洗ってあげたいけれど
天使の衣にふれることなどできなくて
ただ見つめて
ただ雨を見つめて
いま
あついお茶をいれてみた
ほのかに湯気が たちのぼり
甘えたいこの想いが
聞いてほしい言葉のひとつひとつが
ゆらゆらと昇っていくように
窓ぎわに
古くなった愛用の湯呑みをみっつ
ならべて置いた

お茶はとうに冷めたのに
湯呑みはほんのり温かい
こうしていると あの日のように
オルゴールの音色が 手に優しくて




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