紫陽花

     こぼしてしまった幾つものかけらが
      ひかりながら 落ちていき
     梅雨に咲く 花になる

     ひとしずく支えるだけで精いっぱいの
     ちいさな傘が
     幾つも幾つも集まって
     心のなみだを受けとめる

     けっして純粋とはいえなかった
     ひとつひとつの後悔が
     まだ迷いながら降ってくる空に
     ふと映る 紫陽花の色

     間違いばかりでもなかったと
     言うように
     水とひかりの色を映して やわらかい

     幾つもの ちいさな懺悔の結晶が
     かたちを変えて 落ちていき
     手にふれる希望のように
     濡れた庭に咲いている


     そう綴った日を引きよせて言葉を送る
     受話器の向こう側からこちら側に
     こちら側から向こう側に
     ゆっくりと 風が動く




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